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KUNIHIKO MATSUO
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    Sat, 18 Feb 2006

    0217
    今回の滞在中は、全く健康をを害することはなかったんだけれど、最後の最後になって、熱を出して寝込んだ。
    二月十七日は一日中ジャイの家で寝ていた。なぜかインドで熱を出したり腹をこわしたりして、日本から持ってきた薬が効いたためしがない。パブロンもバファリンもノーシンも正露丸も、全く効力が感じられない。とにかく、寝て耐えるしかない。
    今は十八日の朝八時半。熱はまだあるようだけれど、昨日に比べると良くなってきている。日本でなら気合いで熱の事なんて忘れてしまえるくらいの体調にまで回復した。
    この最後の発熱は、多分疲れとインドに対する気持ちから来るものだと思う。寝ながら考えていたことはインドとインド人に対する不満ばかりだ。どうしても頭から払拭することができない。日本に帰れば収まるのだろうけど、今はインド人のあの首振りや独特のインドなまり英語を聞くのもイヤだ。そして、そういう自分のつまらない心の狭さがイヤだ。
    いくつかやっておかなければいけないことがあったのだけれど、どうにも終わらせることができないので、東京に戻ってからになってしまいそうだ。一つはリハーサル用のタイムカウンターの作成。もうひとつはサウンドトラックCDの作成。それからだめ出しノートの作成。これに関しては口頭ではいろいろ伝えてはいるけれど、ちゃんと文字にしてやらないと、どうも彼らはすぐ忘れる・・というか無視をしがちだ。そして勝手に物事を進めたり思いこんだりする。それからプレゼン用のショートエディットDVDのタイトルとコピーライトを作り直させる。もしすでにどこかへ送ってしまったのなら、回収させる。
    これからシャワーを浴びて事務所へ行き、ヨーロッパツアーの日程のことやバジェットのことなどを話して、時間があったら、カウンターの録画。DVDから音だけ取り出てCDを作るのくらい、自分たちでできるだろ・・・?というのが通用しないところなので、やってやらなければいけないだろうな・・・。土産物を買いに行く時間なんて無い。あ、LEDの件もちゃんと話をつけておかなければ・・・。まだ税関でとまったままだ。どうなってるんだ、この国は。何度も問い合わせてもらっているが、ショッキングなことに、ケースの鍵をバールでこじ開けたらしい。なんの断りもなく。この国ではお上は絶対なので、そんなことがあっても泣き寝入りするのが普通なのだそうだ。しかし、俺は泣き寝入りはしないつもりだ。保証してもらう。インドの税関相手に裁判を起こしてもいいと思っている。ほんとにあたまにきた。しかも、こじ開けて中を見ても、なんの事やらわからなかったらしく、今監査中なのだそうだ。LEDです。ライトです。アート作品です。ステージ用機材です。と、何度も言っているのに・・・。荷物の申請バリューに応じて、関税をしこたま払わなければいけないらしい。払ってしまえばなんてことはないんだろうけど、アタカラリとしてはそんな大金払いたくないのだろう。とにかくジャイの来日のときまでには何とかして、一緒に手持ちで持って帰ってきてもらうように言っておいた。
    今日は十時半の飛行機なので、あの空港へは八時半に着いていないといけない。東京に帰れば、それはそれでまた大変な生活が始まる。最近、一番自由でいられるのは飛行機の中なのかも知れない、と思う。

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    0216
    二月十六日。いま午後六時五十分。ジャイの家でマットレスに横になっていたけれど、眠れなかった。まだ熱がある。熱のせいで体の節々が痛い。
    けさ六時半、トリッチーからの寝台車でバンガロールへ戻ってくる。正規の到着時間は五時半。「五時半は六時半ではない!」と誰かに小一時間訴えたかったのだけれど、仕方なくあきらめる。
    ハンピへかみさんといったときは、ACスリーパーという、それなりのクラス(とはいえ、日本であれだったら困ったことだけど)だったのだけれど、今回は枕もシーツもなく、狭いボックスに六人、まるでカプセルホテルのように寝るシート。窓はこわれていて閉まらなかったので、一晩中がんがんに風が入ってくる。ジャイはそれを知って気を遣ってくれて窓から遠い一番上の寝台を譲ってくれたのだけれど、寒いのなんの。明け方は冷え込む上に一晩中あの風にさらされていたので、すっかり風邪をひいてしまった。しかし、あんなに風が吹き込んでくるのに、一晩中便所のにおいがするのは何でだろう・・・・。くそとションベンのにおいだ。それにでかいゴキブリ。オヤジやガキ、おばちゃんの金切り声、ひっきりなしにつけたり消したりされる蛍光灯。全く他者を認識していないかのようだ。一晩中眠れず、インドを恨み続けた。日本の文化がいかにすばらしいか、インドの文化がいかに劣っているか、などと、考えることを止めることができなかった。ヒンズーの文化やインド人への畏敬の念や尊敬する気持ちは確かにあるのだけれど、恨み始めると、とにかく細かいことが全部イヤになってきて、その思考を止めることができない。それは優劣ではなくて、「ただ違う」というだけなのか・・・。
    で、どこへ行ってきたかというとクンバゴーナムとトリッチーというチェンナイから少し南西へ行ったところにある有名な寺院がむちゃくちゃあるところ。
    哲学者のスンダと奥さんのタヌ、スンダの友達のやたら声が小さくて理屈っぽいおっさんサミュエル、ジャイと俺が今回のメンバー。なんだかみんな張り切っている。
    あけがたクンバゴーナムに到着すると、そのままタクシーで町中にあるホテルへ。みんなここら辺では高級ホテルと呼んでるんだけど、普通のインドの困ったホテル(笑)。もちろんみずシャワー。
    朝食をホテルのレストランで済ませ、なんだかものすごいわくわくテンションの一行は早速ハイヤーで観光・・・・と思いきや、これは観光ではありません。普通に、ヒンズー教徒のお寺参りです。お遍路さんのようなもんです。クンバゴーナム、カンチープラムなどは、南インドでは重要な聖地で、敬虔なヒンズー教徒のあこがれの地なのです。
    とにかく朝っぱらから回る回る、寺ばかり。とにかく寺に行き、プージャをし、五体投地をし、ドネーションをし、次の寺へ。三時くらいまでにもうすでに五つぐらいの寺を回っていた。疲れたのでホテルへいったん戻り、小一時間昼寝をし、また寺へ(笑)。寺へ着けば、一つも見逃してはならぬ、とでも言うかのようにくまなくお参りする。おかげでヒンズー寺院の構造には詳しくなった。しかし、ぐるぐる回る回る。寺は何十にも壁によって囲まれていて、その構造は曼荼羅になっている。中心にご本尊があるのだけれど、トリッチーにある大きな寺(アジア最大の寺町だという)では、七重にもグルグル囲まれていて、その壁と壁の間には街が形成されていて迷宮のようだ。
    どこの寺もだいたいご本尊は観光客は拝めないことになっている。中心までたどり着くと、ヒンズー教徒以外入るべからず、と書いてあるのだけれど、なぜかいくつかの寺では顔パス(笑)というのも、スンダがクンバゴーナムでは知れた顔らしい。なぞ・・・・。顔の利かないところでは、ネパール人のヒンズー教徒になりきり、ご本尊を拝ませてもらうことに成功。しかし、トリッチーの寺では厳しく問われてびびった。ネパールのどこだ?今どこに住んでる?位はいいのだけれど、なんだかわからない言葉でいろいろ聞いてきたので、とにかく、ネパールネパール、カトマンドゥ、と繰り返しておいた。もちろん額にべったり赤い印や白い灰を塗りたくりながら。
    ご本尊の前で何が行われるかというと、たいしたことはなくて、半裸のたいていぽっこりはらの出たおじさん(僧)がマントラを唱えながらありがたいお供え物や花などを、少しめんどくさそうにバラバラまいたりする。それが終わると、今度はランプに火をつけ、薄暗いほこらの奥に不気味にオイルでてらてらしたヴィシュヌやシバ、リンガやラクシュミーを照らしながら、いちいちありがたい部分やストーリーをお話ししてくれてるようだ、タミル語だからわかんないけど。信者たちは時々頷いたり(もちろん首をくりくりっとするあれ)、顔を見合わせて何かを納得しあったりする。
    で、その神様を照らした火に、信者たちは手をかざし、頭に持って行く。ここで好きなだけドネーション。聖水や花、砂糖などを右手で受け取り、頭を変なおわんでカポッとやられておしまい。ほこらの中は狭いので、外へ出ると、みんな五体投地をする。俺は五体投地とまでは行かないけど、とりあえず、跪いて頭を地面の近くに持って行ったりしていた。
    まあ、とにかく、二日間そんなこと”だけ”していたのだ。
    二日目の早朝にタミルムービーの挿入歌が爆音(本当に爆音。スピーカー六台。音割れまくり。テレビモニター二台。違う映像!しかもクラクションの音がさらに爆音。平均時速六十キロほど出ていると思う。バス二台がやっとすれ違える道をとばすとばす。ちなみに何でとばすかというと、前のバスを追い越すためらしい。プライベートバスなので、前のバスより速く次のバス停に着くことが商売につながるのだ・・・)で流れるバスで向かったトリッチーでは、巨大な一枚岩の山頂にたてられた寺に上ったりして、まあ、観光的な要素もあったけれど。飯(カレー)、プージャ、飯(カレー)、プージャ、寝る、の繰り返しでした。
    しかし、一言言いたいんだけど(いや、ものすごい言いたいことや文句や叫んで訴えたいことがグルグルと二日間渦巻いていたんだけど)まず、寺をちゃんときれいにしたらどうなんだろう。入るときは靴を脱ぐのだけれど、どこの寺もなんだか床掃除をしていないように埃と砂利と脂なんかでべったりなのだ。おまけに排水溝なんかが詰まったりしてものすごいくさい水たまりができてたりする。あれだけ信心深い人々が大勢いるのだから、床ぐらいたまにはぞうきんがけしたり、箒ではいたりしてもいいんじゃなかろうか・・・。(あ、そうそう、インド人のぞうきんがけをよく目にする。それはそれはいい加減なもので、タオルのような手ぬぐいのようなべっちょりぬれた布の角をつまんで、車のワイパーのように床で振り回すのだ。だからものすごい早い。ひどいときは足の指でつまんでたりする。それではしつこい汚れが層になって蓄積してしまうだけだろうに・・・。)壁なんて崩れ放題だし、回廊の中には屑やら粗大ゴミなんかが放置されていて、目も当てられない。崩れたレリーフが修復されていたりするんだけど、それは修復と呼べるものではなくて、コンクリでもとあったと思われる感じに盛り上げてあるだけだ。いかにも素人の仕業という感じで。おまけにドネーションしろしろと、物乞いのようにたかってくる。領収書を片手に駐車場の料金所のおじさんのように「あんた払った?はらわなきゃだめだよ!」といいながら当然の権利のように金を要求してくる。
    そういうことはやめた方がいいと思います。きりがないので以上。
    で、帰ってきました。で、かぜひきました。
    日中事務所で送られてきたDVDをチェック。ひどい・・・コピーライトの記述が間違ってる・・・あれだけでかでかと紙に書いて渡したのに、丸C、「アタカラリとクニヒコ」と書いてあるだけ・・・・マツオも無し。松本さん、浜中さん、ちゃんと訂正させますから・・・・。コピーライトの意味がわかっていないからそういう意味のない記述をしたんだろう。それからプルシャルタというタイトルなんだけど、紫バックに、金色の3D文字でしかも変な書体で書いてある・・・・。やめレ。昨日、電話であれほどタイトルバックにはイメージもカラーも不思議な書体もエフェクトも入れるな、そういうのは中身のイメージを決定してしまうから、といったはずなのに・・・・ブラックバックにフォントの種類やポイント数まで言及しておいたのに・・・・旅行になんて出ないで自分でやれば良かったのか・・・。そういうことで疲労も積もり、早々にがっかりした表情で帰宅。横になる。
    帰りたい。

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