0216
去年、深夜に到着してホテルに入り、朝起きたらインドだったことに気がついて、猛烈に拒否反応が起こったのに比べると、まだましだが、ちょっとつらい。
あさ、おきると隣の部屋からたなみ君と先に寝ていた男とおもわれる声がする。ジャイは音楽家だといっていたような気がするがサウンドエンジニアだという。フレンドリーな奴。
そいつと一緒に朝飯。アタカラリの事務所の近くの、おなじみの、というか一年前におなじみだった食堂で、一年ぶりのマサラドーサ。これがずっと食いたかった。実際食ってみると、まあ、たいしたもんではないんだけれど。
コンタクトレンズをはめたのだが、何か目にゴミが入ったらしく、ちょっとこすったら破れた。かけらが目の中に入ったまま、アタカラリへ。なかなかとれない。なんとかしばらくしてとれ出せたのだが、そのくらいで破れるコンタクトレンズは、もう買わない。やすくても。
事務所には、おなじみのダンサーたち、スタッフ。ほんとに、ちょっと一週間くらいどこかへ行ってきたよ、という感じで・・・・。
東京に戻ったときも1時間もすればインド生活は遠い記憶に感じ、東京生活にどっぷりだったのだけれど、そんなにすぱすぱと切り替わるのは、あまりにも環境が違うからか。パラレルワールドを行ったり来たり、みたいな感じがする。東京から持ってきた神楽坂で買ったおみやげの葛湯を渡すときに、それが神楽坂で見たときと同じ物であることが、一瞬東京とインドをつないでいたような気がした。おみやげってそんなもんなんだな。
アヌーシャを待っていたら大遅刻してきたので、挨拶どころではなく、早速たなみ君と街へ繰り出しに行く。
俺にとってはおなじみの風景。まずMGロードへ行って地図を購入。去年もいろいろ行き詰まるとなぜか立ち寄って作戦を練るカフェでやはり作戦を練ってから、インド丸出しのシティーマーケットから歩いて駅へ。レストランでミールスとビリヤニ。ティプースルタン宮殿とやらを見学。
朝から行動すると、時間がいっぱいある。時間がいっぱいあるけれど、別にすることがない。ただ歩き、時々休む。ここではただ歩くだけでも、大仕事だけれど。それは道が悪いから、というだけではなく。
たなみ君は、昨日まで東京にいたのだ。あ、もちろん俺もそうだけれど。俺にとってなれた風景、それはそれでそういう物だとあえて理解しようとしなくてもよくなった風景も、彼にとっては処理すべきマッシブきわまりない情報として存在しているにちがいない。あっけにとられているのが手に取るようにわかる(笑)
もういい加減インドのインドたるゆえんであるすべてのインド的状況から脱出、というか、脱出は無理だということに残念ながら気がついて、逃避するべく、酒を飲みにブリゲードロードのピコーズへ。芸がないがここも去年のなじみ。とはいえ、そうたいしてそういう店があるわけでもない。大体ここでは、あれといえば、あそこ、あそこといえばあれ、と相場が決まっている。
昼日中の三時半から、ロックがバキバキに割れた音で流れるパブでビールをジョッキに三杯飲みながらたなみ君の様子をうかがう。何かものすごいショックは受けているようだけれど、それをどう表現していいのかわからない様子。あまり言葉には出来てこないけれど、このあと十日間で整理をつけていくんだろう。それは、じっさいそうしなければ身が持たないから、そうするのだ。拒否するにしても受け入れるにしても、今まで見たことのないものを見て、今まで生きて見てきたやり方で理解しようとしていれば、また、そうしようとしなくてもそうしてしまっていることに気がつかなければ、発狂する(笑)ま、ここはまだ大丈夫、バンガロールだから。といっても意味ないか・・。
夕方とりあえず、部屋に戻ってきて、ビートルズとか聴きながら一休みしたあと、事務所に行ってみれば、もうみんな帰ったあと。電話線を借りてネットにつなげて、IP電話で理絵の携帯へかけてみる。すごい、つながった。ローカルコールの電話代と一分十円そこそこでオーケー。即座にコンピュータ同士に切り替えれば、ローカルコール代のみ。やすい。まあ、携帯電話の方が、便利は便利だけど。でも高いから、まだ。
東京は地震があったらしい。相当こわい思いをしたんだろう。そんなときに家を空けてごめんなさい。
とにかく声が聞けるのはうれしい。安心して、夕飯を食いにコシーズへ。なじみの店全制覇。
たなみ君は、初日にしてすでにスパイシーな物じゃない物が食いたいとかいってる(笑)
しかし、こんなにたなみ君と一緒に長い時間を過ごしたことはこれまでなかった。コシーズでいろんな事、話す。
明日は、明後日からのチェンナイ行きにそなえ、一人で街をぶらつく練習をするという。前向きだ(笑)一人で街をぶらつくのに練習がいるかい!とつっこまれそうだが、初めての海外。しかもインド、という条件は、初めてのお使いへ行く子供のような気持ちになるんだよな。そんなたあいのないことでも、経験するのとしないのでは、大きく違うんだと思う。少なくとも、俺のように、なんでも人にやってもらった、あまやかされた子供時代を送った人間にとっては。そんな小さな事だけれど、なんか「男」になったような気がするんだよね(笑)明日、たなみ君は「男」になります。リキシャのオヤジとけんかしたり、つきまとってくる奴をあしらったり、道に迷ったり、意外とかなり歩いちゃったり、トイレ探したり、レストラン選んだり、メニュー読んだりそのほか全部初めてだから、ルールの観察、コードの解読、ケーススタディーの繰り返し、頭の中でのシミュレーション、自問自答を続けながら、ちゃんと帰ってきたときは、男子漢だね。いや、たなみ君の名誉のためにいっておくと、俺が彼と同じ状況、つまり、初めての国外、初めてのインド、初日、英語片言、という状況だったら、もっとへなちょこですよ。ないてるよ。そんなことで泣くような俺と比較することが彼の名誉にならないのはわかってるけど(笑)
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